「家賃滞納」時にオーナーはどう対応するか
オーナー自身ができる督促行為
家賃の滞納が確認された場合、何度も滞納しているような入居者でなければ、理由を確認するという意味で連絡を取ることが必要です。では、具体的にオーナー自らが行う督促行為について見ていきましょう。
【電話などによる確認】
家賃支払日を過ぎて入金がない場合は、まず電話をしてみましょう。この場合、頭ごなしに「支払え」などというと後々の関係に支障を来すことになります。うっかり忘れていたということもありますし、たまたま預金口座の残高が少なくなってしまっていたなど、故意に滞納したのではない可能性があるので、口調はあくまで丁寧に話すことが大事です。
賃借人が電話に出た場合、なぜ支払いが遅れたのか、いつ入金できるのかの2点をはっきりと確認しましょう。
もし賃借人が電話に出ない場合は、家賃の支払いが遅れている旨を留守番電話に入れておきます。合わせて再度電話をかける旨を伝えておきます。通話ができたら、上記のように確認を行います。電話をかけるタイミングは、規定の家賃支払日を過ぎたのであればいつでも構いませんが、あまり日にちを空けない方がいいでしょう。「少しくらい支払いが遅れても大丈夫だ」と思われては、次月以降も滞納される可能性が高くなってしまいます。
もしも、電話での話ができない場合や電話で約束した期日にも入金が無かった場合は、直接住戸を訪問して話し合いの機会を持ちます。
ここまではできるだけ穏便に相手と話をすることで、円滑に解決するための督促の進め方です。オーナーにかかる負担もここまでならさほどではないので、できるだけ柔らかな態度で、かつ確認すべきこと、約束すべきことは明確に意思表示をして、双方が同じ理解をしたことを確認しましょう。
【書面送付による督促】
家賃の滞納が2週間以上に及ぶ場合は、単純に支払いを忘れているとは考えにくくなります。そこで次の方策として、「督促状」を送って家賃の支払いを求めていきます。督促状の送付と並行しながら、賃借人との電話・直接訪問での話し合いも続けていきましょう。この段階では、まだ話し合いによる解決を目指します。
一方で、賃借人と連絡が取れない場合や明確な回答が得られない場合は、「連帯保証人」に連絡をします。事態の説明をして、賃借人への支払いを働きかけてもらいましょう。併せて、連帯保証人の支払義務についても必ず伝えておきます。
【内容証明郵便による催告】
家賃の滞納が1ヵ月を過ぎれば、内容証明郵便による催告を検討・実施する段階になります。内容証明郵便は、強制力のあるものではありませんが、このような形で催告を受けると、いずれ法的措置が取られることは大体想像がつくので、大抵の滞納者は何らかのアクションを起こすことが期待できます。また、内容証明郵便は、後々紛争になった場合にも有利な証拠(証明)になります。しかし一方で、実際に内容証明郵便が送られれば、借主に心理的な圧力を与えることになるので、滞納が1カ月を超えたからといって、即、内容証明郵便による催告を行うかは、弁護士に相談してからの方がいいかもしれません。
内容証明郵便は、「誰が」「誰に」「いつ」「どのような内容の文書を送付したか」ということを郵便局が証明してくれるものです。ただし、これだけだと相手が受け取ったかどうかはわからないので、「そんなもの受け取っていない」という強引な主張をする人には対抗できません。それを補完するためには、「配達証明」を付加利用する方法があります。
【家賃督促をするときの注意事項】
家賃の支払いを督促をする際には、そのやり方に気をつけなければなりません。以下に挙げたものは、そのやり方によっては違法行為になる可能性があるものです。なかなか支払ってもらえず、業を煮やして強引なやり方をすると、あまりいいことはありません。もしも、後に住居の明け渡しと家賃の支払いを求めて裁判を起こした場合にも、不利な材料になりますので注意しましょう。違法行為となれば、反対に訴えられて損害賠償を請求されることにもなりかねません。
・早朝・深夜の督促行為
・同一日に複数回の督促行為
・連帯保証人以外への督促行為
・勤務先・学校へ訪問した上での督促行為
・勝手に住戸の鍵を交換する
・賃借人が留守の間に荷物を搬出する
・正当な権利のない人間に督促行為をさせる
・大声を出して家賃の督促をする
・玄関や郵便ポストに張り紙などして督促行為をする
法的措置による請求
内容証明郵便による催告を経ても家賃が支払われない場合、住居の明け渡しを求めて訴訟を起こすことになります。家賃の支払いについても、もちろん請求を続けます。この時点では、法的な専門知識が必要になるので、通常は弁護士に依頼します。
訴えを起こしてから判決が出るまでには、少なくとも数カ月はかかります。訴状などが被告側に届き、何度かの口頭弁論により原告・被告双方の主張が十分に出た段階で、審理を行い判決が出されます。この間には、それぞれの主張を裏付ける証拠の提出や答弁書の提出などをしなければならず、原告(オーナー側)にとってもかなり繁雑な準備が必要になります。それもあり、裁判所から「和解」を進言されるケースが多くなっています。
和解にはいくつかのメリットがあります。まず当事者同士が歩み寄って妥協点を探るので、解決までの時間が短くなること。また、一方的に判決が出るわけではないので、双方がある程度納得できる結果になることなどです。
判決まで進み、立ち退きと滞納分の家賃支払い請求が通ったとしましょう。被告側が判決に従い、素直にそれらを履行すれば問題はありませんが、そううまくいくとは限りません。もしも、被告が判決に従わなかった場合には、「強制執行」という手段で対抗していくことになります。ただし、強制執行まで行ったとしても、必ずしも目指す結果が得られるとは限りません。例えば、借主側が本当に支払うべき金品を持っていないときなどです。
ここまで話がこじれると、かなり大変です。そこで時間・費用・労力が少なくて済む方法として、住居の明け渡しまでは求めない「支払督促」「少額訴訟」制度というものもあります。ただし、案件内容によっては利用効果が見込めない場合もあるので、通常の訴訟を含めてどの方法を取るかは慎重に判断しましょう。
そもそもの家賃滞納防止を考える
家賃滞納が発生した場合に、どのように対応するかを準備しておく必要はありますが、家賃滞納が起こらなければ、それに越したことはありません。安定して家賃を納めてもらえる状況を存続させるために、オーナーはどんなことができるでしょうか。
家賃滞納以外のトラブル防止にも大切なことですが、まずは不動産会社に管理・運営を丸投げせず、どのような人が入居し、物件がどのような状態にあるかを普段からしっかり把握しておきましょう。できるだけ入居審査に積極的に関わる姿勢があれば、借主の選定にオーナー自身が責任を持つことになりますし、借主・不動産会社との関係も深まります。
また、できるだけ頻繁に入居者が替わることがないように気を付けることも大切です。もしかすると、生活する上で不便なことや、住環境に不満な部分があるのかもしれません。クレームや不具合には丁寧かつ迅速に対応できるよう、不動産会社と緊密に連携しておくことが必要です。
また、万が一家賃が滞納される事態になっても、「家賃保証会社」を利用するなどしてリスク回避策を講じておけば、収入減少の心配は減り、問題解決に要する労力も軽減できます。
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